あなたは誰?
消灯時間の過ぎた学生寮。高校2年のある夜、スマホに一通のメールが届いた。登録していないアドレスからだ。
「前から好きでした。明日B組で待ってます」
次の朝、ちょっとソワソワしながらB組の教室へ向かったC組の自分。ホームルームが始まるまで「その人」を待ったけれど、現れなかった。
昼休憩。食堂での昼食もほどほどに、再びB組へ。友人との会話で暇をつぶしながら、「彼女」が来るのを待った。
キーンコーンカーンコーン
午後の授業の開始を告げるチャイムが鳴った。
なかなか姿を明かさない相手のことで、頭はいっぱい。授業の内容は右から左へ抜けていく。5限と6限の100分間超が、数時間にも感じられた。「その人」は、いったい誰なのか。
「あのコか? それともこのコか?」
帰りのホームルームが終わるやいなや、一直線にB組へ行った。周りでは、一人、また一人と下校していく。「帰んないのー?」という同級生の呼びかけには、適当な理由を言ってごまかした。
夕日がまぶしく差し込む教室で、ひとり待ち続けた……。
次の日も、その次の日も「その人」とは会えなかった。
あのメールを送ってきたのは誰だったんだろう。面と向かっての告白に躊躇してしまった恥ずかしがり屋さん?ふざけて誰かになりすました友人?
「その人」は、まだ俺の前に正体を現していない。